ビジネス

寺院僧侶 「お布施の額をネットで明示されると迷惑」

波紋を呼んだAmazonの「お坊さん便」

 近年、「葬式革命」を目指す新興ベンチャーにより、葬儀業界が大きく変わりつつある。葬儀ビジネスに新規参入した企業が「定額制」による料金の透明化を打ち出し、シェアを広げているのだ。

 これまで考えられなかったサービスも次々と生まれている。株式会社みんれびは四十九日や一周忌といった法事(法要)で読経する僧侶をインターネット経由で手配できるサービス「お坊さん便」を展開する。昨年12月からは、ネット通販サイトAmazon経由でも発注ができるようになった。

 しかし、葬儀ベンチャーの新サービスについて、全国の伝統仏教宗派で構成される全日本仏教会は、「宗教活動と商行為の境がなくなってしまうことに関して問題意識を持っている」としたうえ、みんれびのサービスについても、

〈『Amazonのお坊さん便 僧侶手配サービス』の販売は、まさしく宗教行為をサービスとして商品にしているものであり、およそ諸外国の宗教事情をみても、このようなことを許している国はありません〉

 とする抗議の理事長談話を発表している。ただし、現場の寺院への取材を重ねると、「宗教的な理由」とは違った事情も垣間見える。北信越地方のある寺院の僧侶はこんな言い方をした。

「うちは檀家が600ほどありますが、お布施の額をネットで明示されると、やっぱり迷惑ですね。地方では古いしきたりも残っていて、家の格によってお布施の値段も違います。

 多くいただいている家からは『ネットではこんな安いのに、どうしてうちはたくさん払う必要があるのか』という目で見られるようになった。高級外車なんて乗っていたら何をいわれるかわからない雰囲気ですから、車は国産に変えました(苦笑)」

 2009年10月より自社が運営するサイト「小さなお葬式」で葬儀料金の最安プランを19万3000円に設定。生前申し込みの「早割」サービスも行っているベンチャー企業のユニクエストも、サービス開始当初、全日本仏教会から「宗教介入だ」「お布施は出した者の気持ちだから価格を決めるべきではない」といった主旨の書面が送られてきたという。

 同社の田中智也社長(37)はこう反論する。

「死生観が変わってくるなかで、葬儀はビジネス、住職はサービス業ともいえる時代だと考えます。お布施だって労働に対する対価であり、その相場を決めることが『宗教介入』というのはおかしい。

 飲食店は原価率がだいたい30%ですが、葬儀業界は10%ほど。料金は相当割高です。我々の戒名サービスは1文字1万円ですが、それでも高いくらい。葬儀料金はまだまだ下がる」

※週刊ポスト2016年1月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト